似ているもの、これを見分けるというか、頭を整理する上で、一番手っ取り早い方法は、それぞれの特徴であったり、それぞれが他とどのような関係を持っているかを知るという方法だと思う。
昔、「違いの分かる男、ゴールドブレンド」というネスカフェのCMが頻繁に流れていて、あれで野口健という人や、アルピニストという職業を覚えた。
男女差別かのようなこの言葉のせいか、いつしかこのCMを見かけることは無くなってしまったが、未だにネスカフェのコーヒーを見ると、ダバダ~♪という曲が頭の中で奏でられる。
あのCMでの、この音楽と、アルピニストという聞きなれない言葉の印象が、小生の記憶野にこびり付いているのだろう。
横文字、もっと言えばカタカナに弱い小生にとっては、国の名前を覚えるのも一苦労である。ましてや、似ている名前であれば、尚更である。
しかし、一度訪れて記憶に刻み込めば、なかなか忘れることはできないだろうし、忘れかけても「思い出す」ことができるだろう。
その国について、本やインターネットで知識を得れば、記憶することが可能であろうが、実際に訪問することで、より深く記憶できるはずだ。
なにせ、視覚、嗅覚、味覚、触覚、温度感覚と、多様な感覚を総動員している数十時間をもってすれば、国名を区分するくらいは容易いはずだ、という考えに基づき、旅行する「違いの分かる男」シリーズだ。
今回は、スロバキアとスロヴェニア。スロバキアは、チェコと一緒に覚えるので、あまり間違わなそうではあるが。
ということで、スロバキアとスロヴェニアに行くことにしたので、その近所で行ったことがないマルタに寄って帰ってくることにした。
目次
LCCで香港へ!
2019年のゴールデンウィークは、令和への改元のため、カレンダー通りで10連休という史上最大の大型連休となったため、日本発着の航空券は、エコノミークラスが格安ビジネスクラスレベルの高額になってしまっていました。
ということで、格安航空会社で第三国に出てから、長距離便に乗ることに。面倒ですし、乗り継ぎに間に合わないリスクがあるものの、10万円単位で出費が変わるので、やむをえません。
近場でLCCが飛んでいて、行ったことがないところ、ということで、今回は、今は亡きバニラエアで香港に飛ぶことに。はじめての成田第三ターミナル訪問です。
ターミナルビルに入ると、プレハブ小屋感はありますが、綺麗で分かりやすく、好印象です。総じて、JFK第7Tやシアトル空港よりよっぽど立派かと思います。
第三ターミナルには搭乗橋はないものの、蛇腹のテントが屋根付タラップまで備えられているので、雨が降っていても濡れることなく搭乗できそうです。無駄なコストな気もしますが。
香港では、大学のゼミの友人に、美味しい中華レストランに連れて行って頂いた後、綺麗な香港国際空港からイスタンブールにひとっ飛び!
ターキッシュエアでリュブリャナへ!
ターキッシュエアの機内エンターテイメントは、言語でフィルタリングできる機能やお気に入り登録等が使えるので、大量のコンテンツから見たい映画を選ぶのが楽で助かります。
順調なフライトでイスタンブール新空港に着陸したものの、駐機場に空きが無いとのことで、しばし待機です。乗り継ぎ時間がそれほどなかったので、間に合わないのではないかという不安が募ります。そうこうしていると、漸くシートベルトサインが消灯。
目の前にある搭乗橋が空いているのもかかわらず、沖留め。
はじめての空港でのこの状況は、ピンチです!
乗り継ぎ空港の構造が分かっていないと、乗り継ぎの時間短縮が難しかったり、道を間違って時間を大幅にロスする可能性があるので、時間のゆとりがないと、乗り継ぎ失敗のリスクが高まります。
しかし、そんな不安は不要でした。新イスタンブール空港は、旧イスタンブール空港とかなり構造が似ていたので、スムーズな乗り継ぎができました。
ドアクローズから離陸まで45分くらいを要しました。 離陸順の交代があったたこともありますが、空港がだだっ広くて滑走路が遠いので、かなりの距離のドライブでした。
滑走路への道中、737MAXが並べられている一帯がありました。新車が野ざらしにされているような悲しさ。
リュブリャナ街歩き
リュブリャナの旧市街は非常にこじんまりとしていて、あっという間に回れます。
丘の上のお城をくるりと囲む川の両岸がそれにあたるようで、教会や古い建物が軒を連ねます。
お城からは市街が一望できます。
街の中心は三本の橋が一体になっている三本橋。
リュブリャナの店員や運転手はこちらに話しかけてくることはほとんどありませんが、こちらから問いかけると、英語は得意ではなさそうですが優しく接してくれます。イタリア人みたいに向こうから馴れ馴れしく話しかけてくるのに、こっちが聞きたいことは答えてくれない人とは真反対(笑)
スーパーでの物価調査では、東京のスーパーと概ね同じ水準。ユーロ圏としては過ごしやすそうです。
ウィーンからコシツェへ
スロバキアには、宮崎駿監督の名作「天空の城ラピュタ」のラピュタ城のモデルと噂されるスピシェ城があります。「紅の豚」、「魔女の宅急便」そして「もののけ姫」のモデルを訪ねた小生としては行かない訳にはいきません。
スピシェ城へは、第二の都市コシツェから。コシツェには首都ブラチスラバ経由で向かいます。
スロバキアの首都ブラチスラバにアクセスするには、空路より陸路が便利。というのも、ブラチスラバの空港は路線・本数ともに非常に限られているものの、ウィーン空港から、ブラチスラバまでは、安価な快速電車で2時間以内、乗り換え1回。かなり便利。
ブラチスラバから第二の都市コシツェに行くには特急で5時間以上かかるので、時間とコスト節約のため、久しぶりに夜行列車!
ブラチスラバ中央駅は、予想通り治安が良い感じがしません。 たぶん夜だから寂しさが高まったのだろうとは思いますが、ホームは共産主義を感じさせる雰囲気で、寒い。
ロビーは列車を待つ人と、理由は分からないもののタムロしている若者や若くない人がおり、やや混沌としています。とはいえ、明るいし、警察官がウロウロしているので、そこまで危険を感じることもありませんが、何を喋ってるか全く理解できない中、待合室で一緒にいると、警戒心は解けないので、夜も更けてくると疲れます(笑)。
乗車すると、元プロレスラーみたいな女車掌が部屋から現れました。老眼鏡をかけながらゆっくりとチケット(これはインターネット予約した際に送られてきたものを自分で印刷したもの)に目を通します。すると、手書きのメモ書きと見比べ始めましたが、言葉を解さない小生には、何を見ているのかは分かりません。いったいチケットのQRコードは何のためについてるのか不思議でなりません。
しばらくすると、女車掌は指で四を示しながら、スロバキア語とおぼしき言語で小生に話しかけます。新手の技かと思い狼狽している小生を見かねて、客室に案内してくれました。
ここでチケットは一旦没収されました。
室内は綺麗にされており、シーツも清潔感のあるものでした。暖房もしっかりついてますので、揺れを除けば、かなり快適です
到着20分前になるとあの女車掌がドアをノックし、「twenty minutes!」と20分で到着することを告げるとチケットが返却されます。
駅に到着するも、最後尾の小生らのドア前にはホームがなく、女車掌の先導で車輌の進行方向へ移動し下車すると、地方ターミナル駅らしさを感じるコシツェ駅に到着です。
コシツェ街歩き
コシツェ駅は、トラムが走っている等、ブラチスラバ駅に比べて欧州の駅の雰囲気。
駅を少し離れると、町はさっそく東欧あるいはバルカン半島のような風情が出てきて、地方都市であることを実感します。
聖エリザベス大聖堂/Dóm svätej Alžbety
ここは予想以上に立派で、その周辺の飲食店の効果もあってか、周りの雰囲気とは一線を画します。
天空の城ラピュタのモデル?スピシェ城
映画のロケ地というのは、なぜか訪れたくなってしまうものです。行ったからどうってことはないのですが、やはり惹きつけられるものがあります。
アニメーション映画でもモデルになった場所というのがありますが、小生のナンバーワン アニメーション映画である『天空の城ラピュタ』のラピュタ城のモデルでは?と言われているスピシェ城が、ここ、スロバキアにはあるのです。
スピシェ城まではバスで行くことになりますが、直通便が少なかったり、チケット売場や運転手が英語は話せないようなので、ちゃんと行けるのか不安感がありますが、Googleのおかげでその不安も軽減されます。
スピシェが近くなると進行方向やや左にドカンとスピシェ城が見えてきます。
まもなく、スピシェの街に到着です。
バス停からスピシェ城までどうやって行けばいいのか良くわかりませんが、城の方角に進んでみました。
なるほど、天空の城ラピュタのモデルと噂されるだけはあります。立派です。
たぶん道だろうというところを歩いていけば城にたどり着きそうです。
小生は雨が降ってきたので、途中で引き返しました。進むべきか迷いましたが、間もなく雷がなってスコールになったので、良い判断だったかなと思います。
帰りは、ブラチスラバとコシツェを結ぶ鉄道の途中にあるポプラドから列車に乗ることに。
昼食を食べ損ねていたので、ものは試しで、食堂車に行ってみました。
結構メニューが豊富で、価格もリーズナブル。味が外れることはないであろうシュニッツェル(薄いカツレツ)/5.90ユーロを頼んでみました。
価格から、冷凍食品かな?と思ってました。
しかし!注文後、肉を叩く音が!
まさかイチから調理するのか!と驚いてしまいました。その後も肉を揚げる音も聞こえてきて、快速列車の食堂車といえども侮るなかれ、結構ちゃんとしています。
ブラチスラバ街歩き
ブラチスラバ市内観光は、旧市街だけならあっという間に終わってしまうほど小さな街。
聖アルジュベタ教会/Kostel sv Alzbety
住宅街を歩いていると突如現れる真っ青な教会。メルヘンチックな意匠。
青の教会から川に向かって歩いていくと、大きな橋に至ります。この橋から、旧市街が一望できます。ブラチスラヴァ城前の橋の反対側には、展望台があり、こちらから旧市街が良く見えそうです。天気が良いので良い機会だったのですが、行くのを忘れました。。。
ブラチスラヴァ城/Bratislavsky hrad
街から一番目に付く小高い丘の上にそびえ立つのが、ブラチスラヴァ城。坂を上るので、少し汗ばみます。
麓の広場には、東欧自動車メーカーの雄、シュコダの旧車がディスプレイされており、皆さん代わる代わる写真を撮っていました。
坂を上がると、旧市街の赤い屋根が広がる向こうに新市街の高層ビル群が見渡せます。
ミハエル門/Michalská brána
ミハイル門周辺の通りがかなり賑わっている印象です。
旧市庁舎
と、あっさりと街歩きは終了です。再びウィーン経由で一路マルタへ!
マルタ旧市街 Valletta
マルタ空港はタラップで降りることになります。晴れていたので、気持ちよい到着!
ホテルからヴァレッタにはフェリーで。
あっという間にヴァレッタ西部に到着します。
ヴァレッタは、歩いて回れる広さですが、かなり起伏が激しい石畳ですので、結構足が疲れます。坂のある街が好きな小生にとっては堪りません。ほとんどの道は狭く、全体的に黄土色な街ですが、 多くの出窓がカラフルに塗られ、街に彩りを与えるアクセントとなっています。
聖ヨハネ大聖堂/St. John’s Co-Cathedral
聖ヨハネ騎士団の中心的建築物である聖ヨハネ大聖堂。
ここがマルタ観光のハイライトと言ってよいだろう。
内装は、綺麗な天井画や、金に彩られた意匠で、華々しい装いです。
調べてみたところ、この天井画は、フレスコ画ではなく、油絵なのだそうです。
カラヴァッジョ作 洗礼者聖ヨハネの斬首
ここを訪れた最大の目的が、カラヴァッジョの最大の作品である『洗礼者聖ヨハネの斬首』。大聖堂の小礼拝堂のど真ん中に鎮座。
小生が、作者から調べて見に行くのは、西洋画ではこのカラヴァッジョだけ。美術館はそれほど行きたいと思わないですが、カラヴァッジョがあると聞けば、多少の行列も厭わず、足を運んでしまいます。
この小礼拝堂には椅子もあり、ゆっくり眺めることができます。
カラヴァッジョ作 執筆する聖ヒエロニムス
『洗礼者聖ヨハネの斬首』 から、振り返るば聖ヒエロニムスがいる。
こちらは小さ目な作品です。カラヴァッジョの作品の難点は、グロテスクなものが多いということ。その点、こちらの作品は髑髏が気になるくらいですので、見易い作品だと思います。 『洗礼者聖ヨハネの斬首』 とは違い、近くまで寄って見れることも良い。
マルサシュロック湾 Maesaxlokk Bay
カラフルな漁船が屯していることで有名なマルサシュロック湾へ。
潮の香りを頼りに海の方に歩いていくと、色とりどりに装飾された小舟がたくさん浮かんでいる様子を見ることができます。
夕暮れの中、小舟がぷかぷか浮かぶ姿を眺めていると、自分も仕事を終えた船の一艘になった心地がしてくるような。
ゴゾ島 Gozo Island
マルタの北にあるゴソ島。綺麗な海岸や街並みを楽しめそうで、前日に続き、天気も良かったので、ちょっと遠出してみることに。
船からゴゾ島を見渡せますが、天気が少し悪くなってきました。
ブルーホール/Blue Hole
岩場を眺めてしばらくのんびり。
大聖堂/Cathedral
島の中心部にあり、一番目立っているのが、大聖堂。
ドーム状の天井に見せかけて描かれただまし絵が有名らしいのですが、小生が訪れたときは、補修工事中でした。残念。
城壁の上を歩くことができます。ここから、街が一望できますので、ここから行きたい場所を探してみるのもいいかもしれません。
城壁を下りて、街を散歩してみました。
黄土色のブロックの路地が永遠と続いているようです。
狭い通路がクネクネを続いており、小生好みの街。
ところどころにある、ファサードや、街燈がいいアクセント。
突然ひらけた場所に出ると、パレードに出くわしました。
服装はスペインカラーですが、イタリア国旗を掲げていました。
聖パウロ教会/Proto-Parroċċa ta’ San Pawl
パウロの改心で有名なパウロの教会なのかと思って近づいてみましたが、中に入ることはできませんでした。ググったところ、カタコンベがかなり広いようです。
St Cataldus Church
聖パウロ教会の向かいも教会がありましたが、こちらも入ることはできませんでした。
ということで、フェリー乗り場へのバスが出ているバス停に向かいます。
最近減ってきた電話ボックス、後ろの家の窓の枠、少し先にある郵便ポスト、それぞれ赤が黄土色の壁との良いツートンカラーになっていて、おしゃれ。
結び
ということで、スロバキアとスロヴェニアに行くことにしたので、その近所で行ったことがないマルタに寄って帰ってくることにした。
やはりマルタが一番観光地として整備されていて、旅行者フレンドリー。
しかし、旅の楽しみの一つは、その目的地を定め、目的地にたどり着くまでのドキドキ感。この点では、スロヴェニアの方が良く、スロバキアの方が更に良い。
観光地は、どこも似たような雰囲気になりがちであり、「違いの分かる男」になるには遠回りになってしまいかねない。とはいえ、その小さな違いに気づく力を身に着けることで、「違いの分かる男」にまた一歩近づいていくのだと、そう思う。